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東京高等裁判所 昭和30年(行ナ)46号 判決

当事者間に争のない事実及びその成立に争のない甲第一号証(分割特許願其四の明細書)を総合すれば、原告の本件発明の要旨は、機械の背後に蝶番を設け、機械全体の角度を変更することができるようにした編物機であつて、その目的は機械の据付を容易ならしめると同時に編目直し、目移しに便利ならしめようとするものであることが認められる。

その成立に争のない乙第一号証によれば、審決が引用した昭和十三年実用新案の出願公告第一八二一九号公報には、メリヤス手編機において、機体の背後に左右に突起を有する起伏片を固定し、この起伏片の突起を軸として、これによつて機体を起伏自在に台木上に取り付け、目移し等の場合起伏片の突起を軸として機体を上方に起立することができるようにしたものが記載されていることを認めることができる。よつて右認定にかゝる本件発明の要旨と引用公報に記載されたものとを比較すると、編物機の背後に枢着軸を設けて台板その他に、編物機を起伏自在に取り付け得るようにし、編目移し等の場合に、機体を上方に起立させることができるようにした点において、両者は全く一致し、ただこの起伏部を、前者は蝶番としておるのに対し、後者は突起を有する起伏片とした点において相違するが、これは構造上の微差に過ぎず発明としては、同一範ちゆうに属するものと認めるを相当とする。

してみれば、原告の本件出願発明は、特許法第四条第二号により新規性を欠き、同法第一条の特許要件を具備しないものといわなければならない。

原告は右引用公報に記載されたメリヤス手編機は、原告の出願にかゝる編物機とは、その目的、構造、作用、効果等すべてを異にするものであると主張するが、審決は右引用公報に記載された手編機の全体を引いて、原告の本件発明と比較したものではなく、同公報記載のうち先に認定したと同一の部分に、原告の本件出願発明の要旨とするところのものが、容易に実施することを得べき程度において記載されているとなしたものであることは、当事者間に争のない審決の記載内容から明白であり、この限りにおいては、両者はその目的、構造、作用、効果を同一にするものと解すべきことは前述したとおりである。

原告はなお右引用公報に記載されたメリヤス手編機は、実用不可能のもので、実際今日にいたるも実施されておらず、結局登録すべからざるものであるのに、これを引用して原告の出願を拒絶すべきものとした審決は違法であると主張するが、右引用公報に記載された手編機が機構的に実施不能のものとは解されないばかりでなく、このうち原告の発明の新規性否認の資料とされたのは前述の部分に限られ、しかもこれを記載した右刊行物が、本件特許出願(本件においては原特許の出願された昭和二十五年六月十五日)前国内に頒布されたことについて、当事者間に争のない本件にあつては、これに記載された考案が果して実用新案として登録せられるべきものであつたかどうかは、本件発明の新規性の有無の判断には影響を及ぼすものとは解されないから、右原告の主張もこれを採用することができない。

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